殺人計画

ある日突然、愛する女性をヤツに奪われてしまった。

私は彼女に生涯をささげると決め、何年間もささげてきた。

しかし、秋の空と女心は変わりやすいものであって、気持ちが移ってしまう時は移ってしまうものだ。

だが、わたしはヤツを直接殺すわけにはいかない。

ヤツは私の仕事の上司だし、殺せば人生がだいなしになってしまう。

私は無計画に怒りに任せて他人を殺すような阿呆な人間ではないのだ。

それにヤツを呪い殺した後は再び彼女とよりを戻すつもりだ。



私は呪いというものを信じている。

昔、簡単な呪いを実際に試したところほぼ100%の確立で成功してしまったのだ。

呪いを行ううえで重要な点は信じることである。

きっと呪いやおまじないとは『思い』や『念』によるものであろう。

相手を憎む気持ちが呪いというものを媒介にして相手に影響を与えるのだ。

それともう一つ大切なことは『呪いを行ったことを人に言ってはいけない』ということ。

だが、当たり前の話だが、私は呪いを行ったことを誰にも言うつもりはない。

そして忘れてはならないのが「三倍の法則」である。

呪いとはかけた本人にも三倍になって返ってくるのだ。

だが、いくら私が不幸になろうとも彼女を取り返せるのなら何だって我慢できる。



とにかく私は今から呪いを行う。

フィンランドに伝わる呪いに「呪いの弓矢」というものがある。

私は古書や呪いにまつわる本を色々と研究し、この魔法に決めた。

方法は簡略化するとこうだ。



まず呪いをかける相手の住んでいる方角を向く。

そして呪文を唱えながら弓矢をその方角に飛ばすのだ。

そして矢を放った後、目を閉じ、その矢が相手の身体に刺さり、相手が死ぬことを想像するのだ。

肝心の呪文はこうだ。



「闇を駆け抜けて、呪いの矢が飛ぶ、呪いを運びながら

 ×××(相手の名)に不幸、病気、絶望を与えるために

 さあ、今、矢は相手に刺さった。もう抜けることはない」



私は今、ヤツのマンションの方角を向き、矢を引きながら呪文を唱えている。

ヤツは今頃ベッドで寝ている頃だろう。

そして、「もう抜けることはない!」と強く叫び弓を引く手を離した。



ピュゥーーーーーーー!!



矢は音もなく飛んでいった。

そして目を閉じ

ヤツに矢が刺さりヤツが死ぬことを憎しみを込めて想像した。



そして、目を開けると、なんと偶然そこで抱き合っていたヤツと彼女に矢が刺さって倒れていたのだ!

矢は二人のノドを貫き、皮肉なことに私はヤツと彼女を永遠にくっ付けてしまったのである。

まさか、こんな形で呪いが返ってこようとは・・・・。

まったく、神や仏がいたら呪ってやりたい。



・・・・・・・・数分後・・・・・・・・




「闇を駆け抜けて、呪いの矢が飛ぶ、呪いを運びながら

 『神と仏』に不幸、病気、絶望を与えるために

 さあ、今、矢は相手に刺さった。もう抜けることはない」


矢は天高く昇っていった。


参考文献:二見書房「悪魔学入門」
ちなみに作中の呪いは少しアレンジしてありますのであしからず。










SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO